2015年4月29日水曜日

JASRACの他業者の参入妨害は認定されたが、JASRAC敗訴ではないような・・・いや、敗訴か・・・最高裁判決(2015年4月28日)

 テレビなどで使用されている音楽。その著作権管理事業をめぐっての裁判の判決が2015年4月28日最高裁(最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長))で下されたとのこと。

 原告は株式会社イーライセンス(e-license)、東京都渋谷区広尾五丁目6番6号 広尾プラザ8階所在で2000年設立の比較的新しい著作権管理等を手がける会社。なお、ホームページはhttp://www.elicense.co.jp/


概要
 2009年、公正取引委員会が一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)に、独占禁止法違反による排除措置命令を出したが、同協会の不服申し立てを受けて、これを認め、2012年に先の排除措置命令を取り消す審決をした。

 当該取消審決を不服とした株式会社イーライセンスが、提訴に至ったものである。

 すなわち、株式会社イーライセンスと公正取引委員会の訴訟である。なお、JASRACの本件訴訟への参加の事実や参加の可否については不明。何かわかれば追記予定。複数のニュースをあたってみると、JASRACと公正取引委員会が上告したとあった。なので、JASRAC敗訴といいうるようだ。以上、訂正する。

争点

テレビなどで使う音楽の著作権管理事業において、一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)の使用料徴収方式が他業者の新規参入を妨げているか否か

判決
 JASRACは他業者の参入を妨害しているとして、公正取引委員会の上告を棄却

 なお、5人の裁判官全員一致にてこの判決に至ったとのこと

注意点

一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)が、その使用料徴収方式を改めなければならないという義務が、本判決により生じるものではないとのこと。

 公正取引委員会が、その審決(JASRACの方式を独占禁止法違反にあたらないとした審決)のやり直しを行うことを命じられたものであること。

 すなわち、これから再びJASRACの徴収方式が独占禁止法違反にあたるかあたらないか、公正取引委員会がその判断をするということ。

 ネットにおいてJASRAC敗訴といわれているが、ニュースを見る限りはJASRACの訴訟への参加の可否存否が不明であるので、かかる評価が妥当とはいえないのではないかと思う。別のニュースから、JASRACが公正取引委員会と共に上告したとあったので、JASRAC敗訴の評価に問題はないのではないかと思われる。ここに訂正する。
 

楽曲等の使用料の徴収方式について

一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)の方式・・・包括徴収方式

 株式会社イーライセンスの方式・・・個別に使用料を徴収する方式

 なお、業界シェアは一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)がその99%前後を占めるとのこと
 
 私見だが、テレビ局側からすれば、包括徴収方式がありがたいと感じるかもしれない。個別徴収の新規業者が参入することで手続その他の負担が増える可能性がある。一方、1社のほぼ独占状態が健全であるのか否かという問題もあるだろう。権利者の権利確保にとっては、新興の業者のサービスへの期待もあると思われる。



 この件の今後の動きについても注目していこうと思う。


 なお、株式会社イーライセンスの代理人の弁護士は、越知保見さん。http://www.lawandpatent.com/jpyo.htmlに示されたプロフィールを見てもわかるように、独占禁止法についての第一人者とのこと。同法の著書も出されている。
 法廷での実戦を経て、その重みがその著書に反映されており、またこれからもされていくのだろう。今後、同法に関係することが生じた場合には、この方の著書を手に取ることになるかもしれない。