2015年4月19日日曜日

一人又は少数で会社を立ち上げる場合、合名会社を選ぶことのデメリット

 個人でビジネスをやっていて、軌道に乗ったら考えるのが法人化。

 これをどういう形態で行うか、いろいろ悩むところだろう。

 そして、責任の範囲という問題から、株式会社か合同会社のどちらかを選択することになるのが大半だろう。

 そして、よくネットでは合同会社のメリットが説かれている。

 今回、これを今一度検討してみよう。




費用面では合同会社に軍配


合同会社のメリット。それは費用の面。

 株式会社は、その設立の際に作成する定款について、公証人による認証が必要で、これに費用が発生する。

 また、株式会社はその設立登記の登録免許税として15万円が最低必要となる。

 さらに、株式会社の役員は、最長でも10年。そのため任期満了による役員変更の登記を定期的に要し、その手続ごとに登録免許税を最低1万円納める必要がある。

 その他、公告関連で株式会社にはより負担となるルールが存在している。公告はその方法によってはまた費用がかかる。

 上記の株式会社の特長に対し、合同会社を見てみよう。

 合同会社の設立については、その定款に公証人による認証は不要であり、登録免許税の最低額は6万円だ。

 また、役員の任期が存在しないことから、定期的な役員変更登記はこれを要しない。


合同会社に落とし穴はないのか?


 このように、株式会社に比べて合同会社は安くつくということがわかるだろう。

 じゃあ、合同会社でいいじゃないか?って思うかもしれない。

 実際、多くのサイトで合同会社をこの観点からすすめるものも多く存在する。

 しかし、注意しなければならない点がある。会社には社員(この場合の社員は雇用関係にあるサラリーマンとかのことではなく会社の出資者であり所有者のこと)の退社事由というものがあって、それが会社の種類によって異なっているという点だ。

 合同会社(及び合名会社、合資会社、いわゆる持分会社といわれるもの)においては、社員の死亡や後見開始の審判が、原則その退社事由となる。

 これがどういうことなのか?説明を加えよう。

 あなたが一人で会社を立ち上げたとしよう。この場合、社員はあなた一人だ。

 そして、あなたが死亡したら、株式会社の場合はあなたの株式という社員の地位はあなたの相続人に相続される。あなたの相続人が株主(社員)となって会社は継続してその活動を行う。

 これが合同会社である場合には、あなたの社員としての地位はあなたの相続人に相続されない。このとき、会社には社員がいなくなるため、会社は解散せざるを得ず、その活動は終わる。

 同様にあなたが一人会社で後見開始の審判を受けた場合を考えてみよう。

 株式会社においては、後見開始の審判は社員の退社事由ではないのであなたは株主(社員)のままだ。会社はその活動を続けることができる。

 一方、合同会社の場合、後見開始の審判は社員の退社事由であるので、その時点で社員がいなくなり、その結果、会社は解散せざるを得なくなり、その活動は終わる。

 問題は一人の場合だけではない。あなたが、パートナーと組んで会社を起こした場合を考えて見よう。

 株式会社の場合で、あなたに死亡又は後見開始が起こった場合でも、株式(社員の地位)は、相続によりあなたの相続人に承継され、又は後見開始の審判を受けようともあなたの株主(社員)としての地位は存続する。

 これに対し、合名会社では、あなたに死亡又は後見開始が生じた場合は、社員の退社事由が生じたことになり、あなたの相続人も、あなた自身も社員ではいられなくなる。自動的に、会社はパートナーの手に落ちるということになる。(なお、退社による持分払い戻しはある)


まとめ


 スタートの段階では、合同会社はその費用を安く抑えるに適した会社であることは間違いない。

 但し、継続して活動していくにあたって、ベストといえるかは注意すべきである。

 身内を新たな社員として参加させる、又は軌道に乗った頃に株式会社へ組織変更する、そういったことも視野に入れるべきであろう。

 いつまでも最前線で活動し生存し続けることができるわけでは絶対にない(いつかは皆必ず死ぬ)のであるし、可能性が低いとしても後見開始の審判を受ける事態に陥ることもないわけではないのである。