2015年4月21日火曜日

電気ポットに罪はない

 同じ事実でも、それをした側とされた側ではその評価が異なるという話。

 もう、ずいぶん前の話だ。学生時代の話。

 ある災害で被災したIという同級生の女と、別のAという男の話。


 大規模な災害だったので、学校付近に下宿している知り合い連中の安否の確認や支援のためにいろいろ回っていたのだが、そんな中、同級生のAに会った。

 Aは「Iのところに電気ポットを持っていってあげた」と言っていた。

 ほほぅ。いいところもあるんだなこいつ。

 その後、一応、その他の困りごとがないかも確認のためにも、Iのところにも顔を出してみた。

 そしてAの話題が出た。

 Iは「A君が電気ポットを置いていった」と言った。

 「・・・・・・・・・」

 Aの行為は厚意に基づくものだろうに、なんて言い方をするんだと思いつつも、被災して心細い状況のIには何も言えなかった。

 その後Aに会ったときも、このやり取りを思い出したが、何も言えなかった。



 そして、翌年度のことだ。

 どの授業を履修するか、皆で話していた中に、Iもいた。

 彼女は言った。

 「さて、A君と被らない授業はどれかな~」

 その発言に驚いて、思わずたずねる。

 「何かあった?」

 「今まで散々迷惑かけられたし・・・」

 その迷惑とは一体何だったのか・・・いや聞くまい。

 おそらくそれが「電気ポットを置いていった」という評価の基礎となったのであろう。